第3部分 (第1/5頁)

そう叫んで文彥の手をとると、

「さあ、いこう、むこうへいこう、香代子。牛丸。おまえたちも気をつけて……」

文彥の手をとった老紳士は、逃げるように勝手口からなかへはいると、さっきのへやへ帰ってきた。そして、そこで文彥の手をはなすと、まるでおり[#「おり」に傍點]のなかのライオンみたいに、ソワソワとへやのなかを步きまわりながら、しどろもどろのことばつきで、

「文彥くん、もういけない。きょうはゆっくり、きみにごはんでも食べていってもらおうと思っていたのだが、そういうわけにはいかなくなった。きみ、すまないが帰ってくれたまえ。そして、二度とこの家へ近寄らぬように……そのうちにわしのほうからたずねていく。さあ、早く、……早く帰って……いや、ちょっと待ってくれたまえ」

そこまでいうと老紳士は、風のようにへやのなかからとびだしていった。

文彥はあっけにとられて、キツネにつままれたような気持ちだった。いったい、くぎづけにされたあのダイヤのキングには、どういう意味があるのだろう。そしてまた、この家のひとたちは、いったいどういう人間なのだろうか。

あの老紳士にしても、香代子という少女にしても、また、口のきけない牛丸にしても、けっして悪いひとたちとは思えない。しかし、なんとなく気味が悪いのだ。あのふしぎな老婆といい、地底からひびくみょうな音といい、この家をつつむ空気のうちには、なにかしらただならぬものが感じられるのだ。

文彥はぼんやりと、そんなことを考えていたが、そのときまたもや、だれかにジッと見つめられているような気が強くした。文彥はハッとしてへやのなかを見まわしたが、そのとき強く目をひいたのは、あの西洋のよろいである。

ああ、やっぱりあのよろいのなかには、だれかいるのではあるまいか。そしてかぶとの下から、じぶんを見つめているのではないだろうか……。

文彥はなんともいえぬ恐ろしさを感じたが、それと同時に、どうしてもそれをたしかめずにはいられない、強い好奇心にかられた。文彥はソッとよろいに近づいていった。ああ、たしかにだれかがかくれているのだ。かすかな息づかいの音……。

だが、文彥がいま一步でよろいに手がふれるところまできたとき、あわただしい足音とともに、帰ってきたのは老紳士だった。

「ああ、文彥くん、そんなところでなにをしているのだ。さあ、これを持ってお帰り。日が暮れるとあぶない。早くこれを持って……」

見ると老人の手のひらには、金色の小箱がのっている。

「おじさん、これはなんですか?」

「なんでもいい。おかあさんにあげるおみやげだ。もし、きみのおとうさんやおかあさんがお困りになるようなことがあったら、この箱をあけてみたまえ。なにかと役に立つだろう」

老人はそういうと、むりやりに黃金の小箱を、文彥のポケットに押しこみ、

「さあ、早くお帰り、そして、もう二度とここへくるんじゃありませんぞ。そのうちに、きっとわしのほうからたずねていく……」

老人はそういって、押しだすように玄関から、文彥をおくりだすと、バタンとドアをしめてしまった。

文彥はいよいよキツネにつままれた気持ちである。それと同時になんともいえない気味悪さをおぼえた。文彥はワッと叫んでかけだしたいのを一生けんめいこらえて、その家の門を出ると、足を早めて、さっ

最新小說: 夭壽了,我在遊戲養了個修真女友 原神:用我的眼睛見證你未來 全民:我,召喚獸祭天,無限爆兵 全民:我揮手就是獸潮,無限爆兵 華夏神農 LOL:開局中單被限制出境 紅色綠茵場:紅魔密碼 倒黴的我成為野怪後卻十分幸運 輻射海求生,從小木筏到黑珍珠號 列車求生:開局一輛報廢火車 數學心 全民轉職:我,死亡次數越多越強 入住黃金庭院後,愛莉拉我直播 重生做教練:我有實況無敵艦隊 傳頌之名 新還珠格格之人兒歸家 海上冰路,我能召喚空投物資管夠 浣碧在鈕祜祿氏做嫡女 滬圈霸總說他後悔了 第五人格:各自安好