ろだった。
「窓をあけるのですか」
「ええ」
「あけてあげましょう」
俊助が腕をのばして、重いガラス戸をあけたときである。ふいに、少女のあらい息づかいが、俊助の耳のそばであえぐようにはずんだ。
「おねがいです。助けてください」
「え?」
俊助はおどろいてふりかえると、
「きみ、いまなにかいいましたか」
「あら! いいえ。あの、あたし……」
少女はどぎまぎして、なにか口ごもりしながら、窓からくらい外をのぞいている。
じみなサ��袱問聞輾�紊悉恕ⅳ蓼貿啶拭�槨違蕙榨椹‘をかけているのが目についた。目のぱっちりしたりこう[#「りこう」に傍點]そうな感じのする少女で、二つにあんで肩にたらした髪の毛が、ヒラヒラと風におどっている。
――みょうだなァ。たしか助けてくれといったようだったがなァ。そら[#「そら」に傍點]耳だったのかしら?
俊助はふしんそうに、少女の橫顔をながめていたが、やがて思いあきらめたように、読みかけの本を取りあげた。すると、そのとたん、美しい彼のまゆねにそっとふかいしわ[#「しわ」に傍點]がきざまれた。見おぼえのない紙きれが一枚、いつの間にやら本のあいだにはさんであるのだ。
俊助はなにげなく、その紙きれの上に目を走らせた。
[#ここから2字下げ]
オネガイデス。|吉祥寺《キチジョウジ》マデオリナイデクダサイ。悪者ガワタシヲネラッテイマス。助ケテクダサイ!
[#ここで字下げ終わり]
あわただしいエンピツの走り書きなのである。
俊助はおもわずドキリとして息をのんだ。考えるまでもない手紙の主は少女にきまっていた。さっき俊助が窓をひらいているあいだに、手早く本のあいだにはさんだのであろう。
それにしても『悪者がわたしをねらっています』というのはおだやかでない。いったい、どこに悪者がいるのだろう。
俊助はふと気がついたように、むこうのほうにいる男のほうへ、ソッと目をやった。するとどうだろう。今までいねむりをしていると思っていたあの男が、帽子の下からするどい目をひからせて、じっとこちらのほうを見ているのに気がついたのである。男は俊助の視線に気がつくと、あわてて目をそらしたが、ああ、その目のひかりのものすごさ。
俊助はおもわずゾ��盲趣筏郡�ⅳ筏�筏餞欷韌瑫rに、ふしぎなくらい心のよゆうができてきた。彼はしずかに紙きれをポケットにしまうと、真正面をむいたまま、ひくい聲で、
「しょうちしました。ぼくがいるから心配しないで」
と、ささやいた。
電車は間もなく荻窪についた。かれは、そこで下車するはずだったが、かれはおりなかった。
少女は寒そうにマフラ��頦��悉銫護勝�欏ⅳ趣�嗓��А釘ⅳぁ罰�姟釘�蟆筏工毪瑜Δ四郡頦ⅳ菠啤⒖≈�晤啢蛞姢毪餞韋�銫い槨筏ゎ啢蛞姢皮い毪Δ瀝恕⒖≈�膝榨盲趣長紊倥�蛩激い坤筏俊�
彼女は新宿堂という大きなパン屋の売り子としてはたらいている、けなげな少女だった。
「きみの名、なんていうの?」
「あたし、|瀬《せ》|川《がわ》|由《ゆ》|美《み》|子《こ》といいますの」
「由美子さん、いい名だね」
ふたりが